民泊用の物件を探している方にくれぐれも気をつけていただきたいことがあります。

それは、「違法建築」の物件をつかまないこと。

「違法建築なんて、そうそう当たらないでしょ?」
と思ったそこのあなた!!

要注意です。はっきり言って、日本は違法建築物件が蔓延しています。

今回の記事の最後で、違法建築チェックリストを無料で配布しています。

身近に潜む違法建築

一般的に「違法建築」というと、明らかに敷地からはみ出ていたり、ボロボロで今にも崩れそうになっていたりする

とんでもない建物を思い浮かべるかもしれません。

しかし、実は日本には「違法建築」にあたる建物が、とてもたくさんあります。

素人目線では何が違反なのか分からないもののほうが多いほどです。

驚くべきは、違法建築でも賃貸や売買が可能なこと。

もちろんそのための条件やリスクなどはありますが、違法建築であることを分かった上で

売り買いがなされているのが現状です。

「違法建築」とは、一言で言えば、建築基準法や条例に違反して建てられた建築物のことです。

・建築前に建築計画を確認せずに建てたもの
・建築計画とは違う建物を建てたもの
・改築や増築で違法状態になったもの

などがあります。

特にリフォームや増築などでは、申請を出さないまま工事をしてしまい、

持ち主本人が知らないうちに違法状態になっているケースもあります。

最近の新築物件ではほとんどないと思いますが、

昭和の終わりごろから平成初期にかけては収益性を上げるために違法建築が横行していた、とも言われています。

素人目には見抜くのも難しいですし、実際どれくらいの規模で行われていたのかは分かりませんが、

現状の違法建築の多さを見れば、そうした手段が実際にとられていたことも頷けます。

違法建築で民泊を断念した経験

基本的に、違法建築状態にある物件では旅館業・住宅宿泊事業法ともに民泊を開業することはできません。

“基本的に”と書いたのは、建物や場合によっては
・用途変更をしない限り、合法になるケース
・建築確認が不要でバレないケース
・旅館業法は公衆衛生上の見地から決定されるとの考えから、営業許可が取れてしまうケースがあり得るからです。

違法建築状態にあっても営業ができる可能性も挙げましたが、

素人が一か八かを狙って物件の契約を進めることは絶対におススメしません。

中には言葉巧みに契約をさせようとする不動産事業者もいますので、くれぐれも気をつけてください。

許可がとれなければもちろん民泊は開業できませんし、なんとか開業はできたとしても

建築基準法に適合させるために数千万円規模で想定外の費用がかかったというトラブルも耳にします。

実は、Beds24の代表の長坂もこの違法建築の問題で、2016年に宿の開業を断念したことがあります。

本記事では「違法状態でももしかしたら許可がとれるかも」という議論は置いておいて、

ここからは「違法建築状態にある物件では、民泊を開業できない」という前提で話を進めていきます。

よくある違法建築のパターン

ここではよくある違法建築の3つのパターンをご紹介します。

①建ぺい率・容積率オーバー

建ぺい率とは、土地の敷地面積に対して建てられた建物の割合です。

100㎡の土地に50㎡の建物を建てた場合は、建ぺい率は50%です。

一方で容積率とは、敷地面積に対して、建てられた建物の延べ床面積の割合です。

100㎡の土地に、1階が60㎡、2階が50㎡の建物を建てると、延べ床面積は110㎡となり、容積率は110%です。

建ぺい率や容積率はエリアごとに上限が決められており、これを超えると建築基準法違反となります。

建ぺい率・容積率オーバーになってしまう要因としては次のようなものがあります。

・ベランダやカーポートなど、建物面積に含まれるものを計算していなかった(建ぺい率)
・無許可で増築をし、建ぺい率・容積率が上限を超えてしまった
・新築時には適法だったが、法律が変わり不適格状態になってしまった(※違法建築にはあたりません→後述)

② 採光不良

建築基準法では、採光と換気のために、床面積に対して一定の面積の窓や開口部(窓)の設置を義務付けています。

リビングやダイニング、寝室など、それぞれの床面積に対して採光面積を計算する必要があります。

建築前の確認申請時とは異なる建物を建ててしまうことで採光不良状態になってしまった物件が多いようです。

窓を増やしたり、大きくするのは難しく、違法状態が見つかっても是正ができないため、

特に気をつけなければいけないポイントです。

③確認申請をしていない増築

新築後に増築をする際、10㎡を超える場合には行政への申請が必要です。

この確認申請を行わずに工事を行うと、建ぺい率などの問題がなかったとしても、その時点で違反建築物扱いになります。

なお、増築部分を撤去することで違法状態ではなくなります。

違法増築になってしまう原因の1つとして、確認申請が必要なことを知らないパターンがあります。

物置やカーポートなどでも一定の面積を超える建物の増築は確認申請が必要です。

そしてもう1つの理由は、建築時に「検査済証」を取得していない(あるいは紛失している)ためです。

検査済証とは、建築物が確認申請書の通りに建築物の工事が完了したことを証明する書類です。

昔は完了検査が義務でなかったこともあり、古い建物では検査済証がないケースも多く存在します。

この検査済証がないとそもそも増築の許可が下りないため、

いたしかたなくそのまま工事を行い違法状態になる増築物件が増えてしまうのです。

既存不適格建築物について

ここまでご紹介してきたのは、建築業者や持ち主の落ち度による違法建築でした。

ところが中には、建築時には問題がなかったのに、その後に法律が改正されたことで

不適格状態になってしまった物件もあります。

それを、「既存不適格建築物」と呼びます。

例えば、上記で紹介した建ぺい率や容積率、あるいは耐震基準や接道条件などがあり得ます。

既存不適格建築物の場合、増改築などをせず住宅として使用し続けるのであれば、問題はありません。

住宅宿泊事業法などで建物の用途変更が不要な場合は、そのまま使うことができます。

但し、旅館業として用途変更を行う場合や、増改築などを行う場合には、

今の建築基準法に適合させることが必要となりますのでご注意ください。

違法建築を見極める方法

狙っている物件が違法建築でないかどうかを見極めるためには次のような方法があります。

① 「検査済証」を確認する

最もオーソドックスな方法です。

「検査済証」は前述の通り建築時の完了検査で建築基準法や条例に適合していることを証明してくれる書類です。

検査済証があれば、少なくとも建築時においては適法であると言えます。

ただし、その後の法改正やリフォームによって違法建築や既存不適格建築物になっている可能性があります。

②「建築確認台帳記載事項証明」を調べる

検査済証が確認できない場合は、役所で「建築確認台帳記載事項証明」を取得します。

この証明書で
・建築確認日付
・検査済日付
を確認することができます。

完了検査の実施・検査済証の発行は1999年から義務化されており、

それ以前に建てられた場合は完了検査を受けていないものが多くあります。

完了検査の実施率は、平成10年時点では40%弱。昭和60年ごろは10%しかなかったそうです。

建築確認台帳記載事項証明を発行する場合には、予め登記簿謄本を取得して新築時年月日を確かめる他、

市役所の建築確認台帳で建築確認年月日や、建築確認番号などを調べておきましょう。

③ 目視で確認する

完了検査を受けていることが確認できた場合は、少なくとも建築時には違反建築ではありません。

残す可能性としてはその後の増改築です。

設計図と現況を照らし合わせて、設計図と変わっているところや増えているところなどがないかを確認します。

④ 専門家に相談する

①~③の手順で違法状態にあることが認められなかったとしても、素人目には分からないものも多々あります。

最終的には専門家に調査を行ってもらうことをおススメします。

違法建築でないかどうかの調査に加え、仮に増築などで違法状態になっている場合

それが是正可能なものなのかどうかといったアドバイスももらうことができます。

具体的には、「建築基準適合判定資格者」という資格を取得している一級建築士に依頼します。

建築基準適合判定資格者とは、建築物や建築設備・工作物等に関する

建築確認申請において確認や検査等を行う国家資格です。

調査費用は地域や物件の大きさ、築年数などによっても異なり、数万円~数十万円程度です。

「遵法性調査 ◯◯(地名)」で検索すると、該当地域で遵法性調査を行っている業者が見つかります。

建築士の選び方は下記の記事が参考になります。
https://www.hnaa.jp/faq/architect-select

遵法性調査を依頼するときは「建築基準適合判定資格者」であることを確かめた上で、

過去の調査件数などを教えてもらうようにしましょう。

違法建築チェックリスト

最後に、ご自身で違法建築かどうかを見極める際に使えるチェックリストをプレゼントします!

但し、これは自分で確かめられる範囲のチェックリストです。専門家に依頼する前の簡易チェックとしてご活用ください。

違法建築簡易チェックリスト

まとめ

本日は、民泊事業者泣かせの「違法建築」について取り上げました。

せっかく契約したのに開業できない、予想外の費用がかかってしまったなど

思わぬトラブルを避けるためにも、違法建築にはくれぐれもご注意ください。

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(文:伹馬 薫)