オーナーや管理者が、合法民泊を行う上で最も頭を悩ますところは、どうやって差別化し大企業(大企業の定義:リーダー企業、宿泊業界で言えば、大きなホテルチェーン)に勝つかです。以下に、差別化のヒントを記します。ニッチの意味はこちら。
1.技術ニッチ
技術ニッチとは、リーダー企業が技術を持っていない分野を開拓する戦略を指します。眼科領域に特化した参天製薬、歯科用医療機器のマニーなどが有ります。これを合法民泊に応用すると、例えば、「言語サービスを充実させる」が考えられます。
訪日外国人は、ほとんどの人が単純な英語を理解しますが、中華圏からの訪日客は英語を苦手とすることが多く更に総数が多いため、従業員を雇う時は、中国語を話せる人の雇用をまず検討しましょう。韓国人は日本語や英語を話すことが多いので、韓国語の優先順位は下がります。
以下の訪日外国人の統計を見れば、言語の優先順位は、1.英語、2.中国語、3.韓国語、4. タイ語‥‥‥と読み解くこともできます。
2.チャネル(「販売経路」の意味)・ニッチ
チャネル・ニッチとは、リーダーが追随できない販売経路をおさえ、それを通じて限られた市場の寡占を作る戦略です。
例えば、カオサングループという、安宿のグループは自社の予約を受け付けるウェブサイトを保有しています。海外のバックパッカー達を、ネット広告を使って一挙にこのウェブサイトへ吸収しています。
合法民泊なら、各物件のウェブサイトを作るということでしょうが、数件しか物件がないオーナーにとって、このチャネルニッチを実現するのは非常に難しいでしょう。
3.特殊ニーズ・ニッチ
特殊ニーズ・ニッチとは、一般的ではない特殊なニーズに対応した技術・サービスにより、限定された市場を獲得する戦略です。
合法民泊で例えるなら、ペットの宿泊を可能にする、物件のバリアフリー化、駐車可能、簡単に着られる浴衣を置いておく、などでしょうか。最近は、ペットを家族のように扱う人たちが増えているので、可能であればペットの宿泊可能な民泊施設は喜ばれるでしょう。
4.空間ニッチ
空間ニッチとは、限られたエリアだけを事業領域として資源集中することで、その地域に関しては、大手企業であってもシェアを取れない状況にしてしまう戦略です。北海道に特化したコンビニのセイコーマートなどがあげられます。
合法民泊で例を挙げると、例えば、京都以外は出店しない、東京以外は出店しない、などでしょう。合法民泊の現場の管理は非常に大変で、物理的に距離が離れていると、運営の難易度が増していきます。故に、事業への参入当初は可能な限り、物理的な距離を縮めて運営しましょう。
5.時間ニッチ
時間ニッチとは、限られた時間だけに事業が集中し、固定費の高い大手企業は、需要の閑散期に固定費が回収できなくなることから、なかなかその事業に参入できない戦略を指します。
合法民泊で例を挙げると、鹿児島の出水市の寿ハウスという弊社の管理施設では、鶴の季節と夏休みの季節以外は、宿泊客があまりいません。しかし、受付人員を置いておらず、また地方の一軒家で賃料が非常に低く、固定費を抑えられます。故に、閑散期は固定費を抑えて我慢して運営し、繁忙期に一気に稼ぐということが可能です。
大きなホテルチェーンなどは、このようなことはなかなかできません。彼らの施設は大きく、固定費が大きいのである程度の大きな街でないと運営ができないのです。
要するに、地方に増えている一軒家は「時間ニッチ」の観点から、合法民泊を行うのに非常に適していると言えるでしょう。
6. ボリューム・ニッチ
ボリューム・ニッチとは、リーダー企業が参入するには市場規模が小さすぎ、それ故にリーダーが参入してこない結果、ニッチ企業が利益を享受できる市場です。
合法民泊で例を挙げると、やはり地方の村、町の合法民泊施設の運営でしょう。
大手のホテルが参入できないほどの村や町での、合法民泊運営はおすすめです。鹿児島の出水市の寿ハウスという弊社の管理施設では、楽天トラベルでも非常に高いレビューを残しており、地方でも合法民泊施設ができるということが証明されています。
7. 残存ニッチ
残存ニッチとは、製品ライフサイクルの衰退期に入り市場が縮小し、もはや利益が出なくなったため、大手企業が撤退していった結果、残った企業が限られた規模の中で、利益を追求する戦略を指す。レコードの東洋化成、レコード針のナガオカなどがあげられます。
合法民泊で例を挙げると、地方にある旅館は稼働率が低く、運営が非常に厳しいという統計が多数有ります。以下、旅行新聞より抜粋です。
抜粋部始まり———————————-
宿泊施設のタイプ別の客室稼働率は、シティホテルは79・9%と約8割、ビジネスホテルも75・1%と高水準。リゾートホテルは57・3%で、旅館は37・8%と厳しい。
抜粋部終———————————-
発想を転換すると、地方の旅館を安く借り、それらの施設の多くは過去に日本人向けにマーケティングされていただろうから、伸びている分野の訪日外国人向けにマーケティングを行い、このCRに書かれている知恵を駆使し、旅館の受付の人員を廃し、固定費を抑えれば、十分に生き残れる旅館は日本中にまだ多くあるでしょう。
8. 限定量ニッチ
限定量ニッチとは、生産・供給量を意図的に絞ることでプレミアム感を出し、利益を確保する戦略です。供給量を限定しても一定の固定費がかかるので、収益的には貢献しない可能性があり、リーダー企業は模倣しにくいです。
合法民泊で例を挙げると、京都の町家の宿泊施設などが挙げられるでしょう。町家は供給量が限られているので、このニッチ戦略が適用しやすいです。
9. カスタマイズ・ニッチ
カスタマイズ・ニッチは、完全オーダーメイドに基づく製品・サービスを提供する戦略である。銀座山形屋の注文服や、アメリカン・エキスプレスのカードがその例です。
合法民泊で例を挙げると、例えば、弊社が管理してるある物件では各宿泊者に、ゲストにウェルカムカード(「〇〇様、ご宿泊頂きありがとうございます。レストランのご予約など、なんでもお申し付けください」など)を渡しています。このようなサービスは手間がかかりますが、効果は非常に高いです。
10. 切替コスト・ニッチ
製品・サービスの規模が小さいだけでなく、当該市場に参入するための壁があったり、既存客が製品・サービスを切替えるコストが大きい場合、リーダー企業は模倣をしかけにくい。こうした戦略を、「切替コスト・ニッチ」と呼びます。
合法民泊で例を挙げると、既存のホテルは、「駅近で、シングルかダブルの部屋をいかに設置し、売り上げを高めるか」という競争をしています。実際、シングルやダブルの部屋を多くした方が、収益率は高いのです。
合法民泊は、中古であれば、既存の家に家族の旅行客を取り込みます。これは通常のホテルが参入しようとすれば、特殊なノウハウや特殊な設備(キッチンや、6人が宿泊できる部屋など)が必要で、これは通常のホテルチェーンが参入しにくいです。
いかがでしょうか。以上10の視点を駆使し、ご自身でもニッチ戦略、差別化戦略を練って頂ければ幸いです
この記事は以上です。