北陸応援割、街を行き交う多くの訪日外国人……。観光関連の話題が絶えない昨今。
それもそのはず、日本政府は今、なんとか観光業を盛り上げようと、さまざまな政策を施しています。
他人事? いえ、誰でもこの国策に乗っかりビジネスができるチャンスがあります。
それこそが民泊なのです!
では実際にどんな政策があるのか? 改めて概要を整理すべく、今回は「ビザ政策」」編をお届けします。
インバウンドは柱のひとつ
①観光政策編でみたように、日本政府は今、観光振興に力を入れています。
現在進行中の観光立国推進基本計画(第4次)の柱の一つ、それが「インバウンド」すなわち訪日外国人の誘客です。
計画では、訪日外国人消費額5兆円超え(2019年は4.8兆円)を筆頭に、旅行者数・一人あたりの消費額単価などを
コロナ以前の2019年の数値を上回ることを目指す、さまざまな目標と戦略が掲げられています。
実際、2019年まで、訪日外国人旅行者数は右肩上がりで増えてきました。
2003年 521万人→2019年 3188万人と、16年の間で約6倍に増加しています。
そして2015年以降は一貫して、インバウンドがアウトバウンドの数を上回る構図になっています。
出典: 観光庁 「訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移」
ちなみに、観光庁の最新(2024年3月29日付)の報告によると、2023年の訪日外国人旅行消費額は5兆3,065億円。
早くも第4次計画の数値目標を上回る結果となりました。
人数こそ2019年の値を下回るものの、消費額は過去最大です。今後もインバウンドは順調に伸びていくとが予想されます。
より訪問しやすく、より滞在しやすく
では訪日外国人の急増を可能にしたものとはなんでしょうか?
今回は”国策”という観点から、国境をまたぐ全ての旅行者に関わる「ビザ政策」について取り上げてみたいと思います。
2013年以来、日本政府は積極的にビザ要件の緩和・免除を進めてきました。
例えば、タイ・マレーシア・インドネシアからの短期旅行者はビザが免除に。
他にもベトナム、フィリピン、カンボジアなどASEAN諸国を中心に、短期のビザ取得のハードルがぐっと下がっています。
とりわけ中国からの旅行者は、2015年に個人観光用のビザが発給可能となったことで爆発的に伸びました。
結果、コロナ前・2019年には、訪日外国人の約3人に1人が中国国籍に(国土交通省『観光白書』より)。
ビザの影響力の大きさがうかがえます。
短期滞在向け以外にも、ビザはたくさんあります。
例えば「観光・保養を目的とするロングステイ」用のビザ。
これは、いわゆる富裕層向けのビザで、預貯金額3,000万円以上がビザ取得の条件。お金持ちはいっぱい滞在して、
いっぱいお金を使ってください!と、数年前までは90日だった滞在可能日数を、今は最長1年までに延長しています
(詳しくは外務省「ビザ」を参照)。
さらに法務省は、2024年4月1日から新たに「デジタルノマド」ビザ制度を始めました。
これは欧米中心に約50の国・地域の国籍を持つ人を対象に、日本国内でのリモートワークを許可するもの。
年収1000万円以上など細かな条件はありますが、通常の観光ビザよりも長い、最大6ヶ月の滞在が可能となりました
(詳しくは出入国在留管理庁「在留資格」を参照)。
このように、ハード面の最たるものともいえるビザの敷居を下げることで、日本政府は「ちょっと行ってみようかな」という
人を後押しし、「だったらもっと滞在してみようかな」という人を増やしています。
訪日外国人は民泊好き
さて、こうして増え続ける訪日外国人ですが、どうやら民泊を好む傾向にあるようです。
先日Xでおこなったアンケートでは、民泊のゲストのうち「80%が訪日外国人」という回答が1位となりました。
中には100%が海外からのゲストという民泊も少なくないようです。
X投稿「あなたの民泊ゲストの訪日客の%は」
この割合は驚きです。
というのも、日本国内の観光消費額の約9割は日本人の国内旅行によるものだからです(①観光政策編参照)。
この消費分布を宿泊旅行に限定すると日本人が72%、訪日外国人が6%。同じ比率で考えるなら12人の日本人ゲスト対し、外国人ゲストが1人となるはず。
この割合の逆転ともいえる現象は、訪日外国人が民泊を選ぶ確率が、日本人旅行者よりも圧倒的に高いことを意味しています。
つまり今後、インバウンドが増えれば増えるほど、民泊の需要は高まるはずです。
「デジタルノマド」など新たなタイプの訪日外国人が増えることも、暮らしの拠点として、民泊の長期利用のニーズの追い風となると思われます。
民泊ビジネスはまだまだ成長の余地だらけです。
最後に
今回は、政府の観光政策の「インバウンド」を軸に、ビザ政策の傾向をまとめ、民泊の可能性を考えてみました。
ポイントは、
- 日本政府は観光政策の柱として訪日外国人の誘致に力を入れている
- 事実、外国人旅行者数は伸びており16年で6倍となった
- 成長の背景にはビザの免除・緩和の影響も大きい
- 増え続ける訪日外国人が好む民泊は、今後も需要大
以上4点です。
民泊は誰でも始めることができます。今からでも遅くはありません!
文=町田紗季子